第62章

山口文也は、よろめいた山下麻友を咄嗟に支えた。彼女の額に滲む脂汗を見て、彼は眉をひそめる。

「顔色が悪いですね。病院へ送りましょうか?」

麻友は首を横に振り、足元が安定するとすぐに彼の手を振りほどいて、冷たい壁に背を預けた。

「顔が真っ白ですよ。それでも病院へ行かないと言うんですか?」

文也は心配げに彼女を見つめた。

「一体どうしたんです。具合が悪いなら、なぜ言わないのですか」

麻友は下腹部をさすった。手のひらで強く押し込まなければ耐えられないほどの鈍痛が走っている。

「……大丈夫です。持病のようなものですから。痛み止めも飲みましたし、先生に診ていただく必要はありません」

特...

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