第68章

山下麻友は、強張った背中を壁に向けていた。

山口洸人はけだるげにドア枠に寄りかかり、声をかけた。

「さっきドアの前を通ったら、中から君の声が聞こえたんだが。何をしてるんだ? 王様ゲームの罰ゲームか?」

麻友は軽やかに、だが冷ややかに聞き返した。

「聞いてわかりませんでしたか? 歌っていたんですけれど」

「ああ、わかったよ」山口洸人は悪びれもせずに言った。「ただ、調子外れだったな」

麻友は深く息を吸い込むと、きびすを返して立ち去ろうとした。

山口洸人は片腕を伸ばし、やすやすと彼女の行く手を阻む。

「話はまだ終わっていない。どこへ行くつもりだ」

「でしたら、どうぞ」

彼女の態...

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