第76章

山下麻友は山口洸人の手を振り払い、身を翻してベッドから降りた。冷や汗で濡れた寝間着に冷気が染み入り、体は小刻みに震えていた。

「大丈夫よ。帰って」

山口洸人は表情を凍らせ、彼女の抵抗など意に介さず、強引に抱き上げてベッドへ押し戻した。山下麻友は抵抗を試みたが、今の彼女には彼に逆らうだけの力など残っておらず、結局は大人しく従うしかなかった。

山口洸人がナースコールに手を伸ばす。「中島渉を呼ぶ」

山下麻友は咄嗟に彼の手首を掴んだ。「結構よ。今の先生で十分だわ」

中島渉が来れば、精密検査をされ、彼女が隠している病状が露見してしまう。それだけは絶対に避けたかった。山口洸人に知られたくないの...

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