第89章

「父さん、俺、あの人のところへ行くの嫌だよ」

「どうしてだ? 向こうに行けばもっといい学校に入れるし、お前のことを本当の息子のように可愛がってくれるはずだぞ」

「だって、本当の親父じゃないし。それに、阿部美奈が流産したのって、俺たちのせいだろ? それがバレたら、俺に優しくしてくれるわけないじゃん」

「しっ、声が大きい」

「なんだよ、ここには誰もいないだろ」

山下麻友は忍び足でドアに近づき、わずかに開いた隙間から部屋の中を覗き込んだ。

十代半ばの少年が、ソファでふんぞり返るようにして足を組んでいる。

「俺に言わせりゃ、あの時もっと徹底的にやるべきだったんだよ。阿部美奈とおじさんを...

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