第92章

「水を飲んで」

山下麻友は熱いお湯を注ぎ、テーブルに置いた。小林柚奈は一口飲み、部屋を見回した。

「お姉ちゃん、ここ結構いいところだね」

「アパートだよ」

麻友は彼女の頭を撫で、冷蔵庫から果物を取り出した。

柚奈はそれを一口食べると、ふう、とため息をついた。

「どうしたの?」

「お母さんがさ、仕事辞めて結婚しろってうるさいの」

柚奈は苛立った様子で頭をガシガシとかいた。

「でも私、結婚なんてしたくない。これっぽっちもしたくないんだ」

毎日の仕事はきついが、稼いだお金は全部自分の自由にできる。彼女はそれに心から満足していた。

「ならしなきゃいい。結婚なんて、いいもんじゃな...

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