第28章

退勤した夜、夏目南都のスマホが震えた。相手は周防の祖父――お爺さんだ。

今回は「こっちへ来い」という話じゃなかった。ただ彼女の暮らしぶりや仕事を気にかけて、ぽつりぽつりと慰めの言葉をくれる。

夏目南都は一つずつ丁寧に答えた。通話が切れそうになった、そのときだった。

「お前は、ちゃんと幸せでいればいい。やりたいことをやれ。……俺はいつでも、お前の味方だ。ずっと背中を押してやる」

胸の奥が、ふっとほどける。

周防律と結婚してから今まで――お爺さんだけは、いつだって彼女の側に立ってくれた。世界中が敵みたいに見えるとき、たった一人でも隣に立ってくれる人がいる。それだけで、心は救われる。

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