第30章

夏目南が布団に潜り込んだ頃、周防律はまだ戻っていなかった。

眠りは浅い。見知らぬ場所、見知らぬベッド。窓の外で鳴く、名も知らぬ鳥の声さえ落ち着かなくて、胸の内がざわつく。

どうしても寝つけず、上体を起こしてスマホをいじっていると、周防園子のSNS投稿が目に入った。

焚き火のそばで、周防律と江村茜が顔を寄せ合っている。律がなにか囁いたのだろう、茜は口元を押さえて、花が咲いたように笑っていた。

自分がまだ「周防律の妻」でさえなければ。

この写真だけを見たら、きっと素直に「お似合いだ」と思っただろう。絵になる、美男美女。釣り合いの取れた二人。

園子の添え文まで、やけに文学的だった。

...

ログインして続きを読む