第34章

江村茜は巻き髪をきゅっとまとめ上げると、身軽に馬へまたがった。瞬間、あちこちから歓声が上がる。

夏目南のすぐ近くでは、周防園子が興奮のあまり甲高い声を張り上げ、ついには「兄嫁」とまで叫んでいた。

「がんばって、兄嫁! 兄嫁、がんばれ!」

――兄嫁。

その呼び方に、夏目南は思わず園子を見やってしまう。

隣で豊川悦子が鼻で笑った。

「聞いたんだけど。前から周防様に、別の気持ちがあったんだって? どうやって星辰グループに取り入ったのか知らないけど……ほんと、努力ってものに一切興味なさそうね」

夏目南は眉を寄せる。

「……何が言いたいの?」

豊川悦子はツンと顎を上げ、声を落とした。...

ログインして続きを読む