第137章 認める

「江口を、私のオフィスへ呼んで。いい? データの話は一切しないで。別の用件で来させなさい」

江口が来るのは早かった。雪乃のオフィス前に立つと、作りものの困惑を顔に貼りつけ、振り返ってアシスタントへ探るように聞く。

「奥様が急に俺を? ……プロジェクトで何かあったんですか」

アシスタントは小さく首を振った。事務的な笑みを崩さないまま、江口を促して数歩だけ前へ進む。

「私にも詳しくは。中で奥様と直接お話しください」

もうオフィスの前まで来ている以上、アシスタントもわざわざ嘘で取り繕うつもりはない。

そう言うと、江口の返事を待たずに軽く二回ノックした。中から雪乃の「どうぞ」という声が返...

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