第9章 あの男はただ者ではない

「お嬢様、大旦那様がお食事にお呼びです」

 水上伊鶴は、ひとまず気づいていないふりをすることにした。

 ドアを開けて階下へ向かおうとした、そのとき。視界の端に、ダイニングテーブルへすでに腰かけている長い髪の少女が映った。白いワンピース姿で、楽しげに皆へ話しかけている。

 祖父はときおり相槌を打ち、芹沢蒼真は新聞に目を落としたまま、たまに紙面をめくる。

 傍から見れば、ずいぶん和やかな団欒だった。

 水上伊鶴が階段を下りていくと、席にいた女は物音に気づいて振り向いた。そこにあったのは、清楚で無害そうな顔立ち。

 柔らかく微笑みながら、彼女は隣の祖父の腕を揺らし、甘えるように口を開く...

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