第6章

浅見水希視点

最初に感じたのは、消毒液の匂いだった。まぶたには鉛の重りが結びつけられているかのように重く、それでも私は無理やりこじ開けた。

白い天井。……ここは、どこ?

記憶が断片的に蘇ってきた。あの写真。観覧車での五十嵐佑真と立花杏弥。対峙。私にぶつかってきた五十嵐佑真。どんどんひどくなっていくお腹の痛み、そして――

「浅見さん?」

穏やかな声に顔を向けると、親切そうな瞳をした、黒髪をポニーテールにまとめた若い看護師がベッド脇の機械をチェックしていた。

「お目覚めですか。お体はいかがです?」

「なにが……」

声はかすれていた。

「何があったんですか?ここはどこ...

ログインして続きを読む