第5章

真夜中の桜原美術工房。真弓から借りたこの場所で、私は一人だった。新しいアパートが見つかるまで、ここを仮住まいとして貸してくれていたのだ。隅に積まれた段ボール箱が、私の人生が完全に崩壊してしまったことを突きつけてくる。

「これが最後の箱よ、彩花」私は自分に言い聞かせ、ガムテープを引き裂いた。

中身は、蓮と一緒に暮らしたあのアパートから持ち出した最後の品々。数枚の絵と、いくつかの美術用品、そして彼からもらったアンティークの写真立て。

私はその写真立てを手に取り、中の写真を取り出そうとした。浜辺で撮った、二人にとって初めての写真。それが今では、残酷な冗談のように見えた。裏板を開けようと...

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