第44章 食卓の戦い

配信ルームの視聴者たちも、この高菜漬けと魚の煮込みの酷い見た目について次々とツッコミを入れていた。

高菜漬けと魚の煮込みが食卓に並んだが、誰も先に箸をつけようとせず、腹を空かせた四人は互いに譲り合い始めた。

橘詩音は笑みを浮かべ、わざと怪我をした方の手で取り箸を持ち、大きな魚の切り身をいくつも望月美緒の皿に取り分けた。

「美緒さん、これ、午後に食べたいって言ってたお魚よ。あなたのために特別に作ったの」

彼女は午後、魚が食べたいなどと言ってはいない。ただ空腹のあまり、無意識に青山希の作った魚はいい匂いがした、と言っただけだ。

橘詩音に白を黒と言いくるめられ、彼女もその顔を立て...

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