第56章 サクラ

桐谷紫帆は今まで見たこともない物を見つけ、好奇心に駆られて手に取りまじまじと眺めた。

「これ、何に使う木か誰か知らない? もしかして太鼓を叩くやつ?」

ご隠居は呵呵と笑った。「お嬢ちゃん、それはバグパイプだよ。間奏を吹くためのもんだ」

少女は少し驚いた。クラシックなバグパイプは見たことがあるが、こんな木の根っこのような形をしたものは初めてだった。

青山希が微笑みながらそれを受け取る。「確かに風変わりなデザインのバグパイプですね。ほら、ここが空気穴で、下にはリードも付いています」

青山希が指差した場所を見て、桐谷紫帆は漸く合点がいった。

「ああ、こんな所に。だとしたら、この...

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