第6章 出発

エマ視点

ウィンストンの顔が、二秒も経たないうちに真っ青から真っ赤に変わる。両手は固く拳を握りしめ、その声は純粋な怒りに震えていた。

「エマ!自分が何をしたかわかっているのか?先に手を出してきたのはあのクソ野郎どもだ、私のセキュリティで十分対処できた!一体なぜ、あんな無謀な真似を!」

私はナイフの刃から血を拭いながら、落ち着いた声で返す。

「ウィンストン、それで何かが解決したと思う?」

「当たり前だ!ホテルのルールは、君のような人間を守るためにあるんだぞ」

「今日は彼らでも、明日は他の誰か。来週にはもっと増えるわ」

私たちの周りでは、他のゲストたちがじりじりと距離を詰め...

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