第21章
杉山夕晴は腕の中の弱りきった星ちゃんをきつく抱きしめたまま、虚ろだった視線をゆっくりと結び直し、江崎渚の血に濡れて皮膚が裂けた手へ落とした。
純銀の鎖が食い込んだ傷は骨が覗くほど深い。狼毒草の毒は、江崎渚の狼魂をじわじわ腐らせている。
江崎渚は身を裂く痛みを噛み殺し、震えながらも星ちゃんの治療を続けた。
もう分かっている。橘陸斗に縋ったところで無駄だ。あの男が、星ちゃんに精血を一滴でも恵むことなど、あり得ない。
運命の番だの、月神の導きだの――。
月神が用意した帰結が、娘が実の父親の手で死んでいくのを見届けろというものなら。杉山夕晴は、その信仰ごと叩き捨ててやる。
「江崎渚」
...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
12. 第12章
13. 第13章
14. 第14章
15. 第15章
16. 第16章
17. 第17章
18. 第18章
19. 第19章
20. 第20章
21. 第21章
22. 第22章
23. 第23章
24. 第24章
25. 第25章
26. 第26章
27. 第27章
28. 第28章
29. 第29章
30. 第30章
31. 31、
32. 32、
33. 33、
34. 34、
35. 35、
36. 36、
37. 37、
38. 38、
39. 39、
40. 40、
41. 41、
42. 42、
43. 43、
44. 44、
45. 45、
46. 46、
47. 47、
48. 48、
49. 49、
50. 50、
51. 51、
52. 52、
53. 53、
54. 54、
55. 55、
56. 56、
57. 57、
58. 58、
59. 59、
60. 60、
縮小
拡大
