34、

橘陸斗は即座に狼の姿へと変じ、杉山夕晴を背に放り上げると、深い雪を蹴散らして駆け出した。

追撃は、丸三日三晩にも及んだ。

最後の包囲を破った先で、二人は月神の祠の断崖へと追い詰められる。

もう、退路はない。

橘謙人は数十人のアルファを率い、崖際までぴたりと包囲していた。

「兄貴。命だけ置いていけ。そうすりゃ、せめて形の残る死体くらいにはしてやる」

橘謙人は赤毛の巨狼へと姿を変え、牙のあいだから糸を引く涎を垂らした。

杉山夕晴は短剣を強く握りしめ、橘陸斗の前へ立つ。

彼女はすでに限界だった。立っていることすら、かろうじて気力で繋いでいるだけ。

橘陸斗は彼女を背後へ引き寄せ、夜...

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