51、

「起きろ。そこで死んだふりをするな」

橘陸斗は見下ろし、氷みたいに冷えた声で吐き捨てた。

杉山夕晴は指先をわずかに動かす。息を吸うたび、胸の奥がずきりと裂けるように痛んだ。

橘陸斗は待てなかった。身を屈め、びしょ濡れの長い髪を乱暴に掴む。氷の床から引きずり起こすと、そのまま主寝室へと引っ張り込み、ベッドへ放り投げた。

彼女が身にまとっているのは、冷水を吸い込んだ薄いバスローブが一枚だけ。襟元はとっくにだらしなくはだけ、水滴と血痕と残った泡が一緒になってシーツへ染み込み、大きく汚していく。

「杉山夕晴。自分がどんな面してるか、鏡でも見ろ」

橘陸斗が身をかがめる。青ざめた顔、氷青の瞳...

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