51、
「起きろ。そこで死んだふりをするな」
橘陸斗は見下ろし、氷みたいに冷えた声で吐き捨てた。
杉山夕晴は指先をわずかに動かす。息を吸うたび、胸の奥がずきりと裂けるように痛んだ。
橘陸斗は待てなかった。身を屈め、びしょ濡れの長い髪を乱暴に掴む。氷の床から引きずり起こすと、そのまま主寝室へと引っ張り込み、ベッドへ放り投げた。
彼女が身にまとっているのは、冷水を吸い込んだ薄いバスローブが一枚だけ。襟元はとっくにだらしなくはだけ、水滴と血痕と残った泡が一緒になってシーツへ染み込み、大きく汚していく。
「杉山夕晴。自分がどんな面してるか、鏡でも見ろ」
橘陸斗が身をかがめる。青ざめた顔、氷青の瞳...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
12. 第12章
13. 第13章
14. 第14章
15. 第15章
16. 第16章
17. 第17章
18. 第18章
19. 第19章
20. 第20章
21. 第21章
22. 第22章
23. 第23章
24. 第24章
25. 第25章
26. 第26章
27. 第27章
28. 第28章
29. 第29章
30. 第30章
31. 31、
32. 32、
33. 33、
34. 34、
35. 35、
36. 36、
37. 37、
38. 38、
39. 39、
40. 40、
41. 41、
42. 42、
43. 43、
44. 44、
45. 45、
46. 46、
47. 47、
48. 48、
49. 49、
50. 50、
51. 51、
52. 52、
53. 53、
54. 54、
55. 55、
56. 56、
57. 57、
58. 58、
59. 59、
60. 60、
縮小
拡大
