第8章

「急げ! 輸血の準備! 人工呼吸器つけろ!」

手術室の扉が乱暴に押し破られた。江崎渚は目を血走らせ、杉山夕晴の胸元から溢れ続ける血を、両手で必死に押さえつけている。

全身ががくがく震えていた。さっきまで白かった白衣は、いまや目に刺さるような暗赤色に染まりきっている。

ストレッチャーの上の女は骨が砕け、臓器まで傷ついていた。橘陸斗のあの蹴りには、十割の殺意が乗っていたのだ。

普通の人狼なら、こんな致命傷を負った時点でもう冷たくなっている。

――それでも、彼女は生きていた。

特殊な体質。その身体の奥に眠る自己治癒が、裂けた心脈をゆっくりと縫い合わせ、無理矢理にでも命をつなぎ止めている...

ログインして続きを読む