第40章

消毒用アルコールが傷口に触れた瞬間の、あのツンと突き刺す痛み。ぞわりと頭皮が粟立つようで、佐藤美咲は一気に目尻を潤ませた。佐藤恵子は胸が痛むのか、美咲の肩を抱いて、ずっと優しく宥めている。

ただ一人――高橋詩織だけが、阿部蓮の手元を見ていた。薬を塗る、その指先を。

女の勘は、ときどき当たる。

いや、当たりすぎるくらいに。

「お兄ちゃん、もうちょっと優しくして……」

痛みに気を取られて、詩織の表情も、部屋の空気も、美咲は何ひとつ気づかない。涙声でそう言った途端、阿部蓮の手がわずかに止まり、それからまた作業を再開した。

美咲は泣きたい。痛いのが怖い。足で阿部蓮を蹴ろうとする。

阿部蓮...

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