第61章

佐藤美咲は嘘をついていなかった。午後の出番は多いだけじゃない。重い。しかも全部、胸をえぐるような苦しい芝居ばかりだ。夜のシーンには雨に打たれる場面まであるし、酒をあおって泣きじゃくるくだりもある。失恋したうえに父親の叱責とも向き合わなければならず、あの圧を受け止めきれない――そんな役だった。

若い女の子が、反抗期に踏み込む。

佐藤美咲の恋愛パートは、正直いえばまだ平凡で、台詞回しも十分とは言えない。けれど――泣きの芝居だけは別格だった。

ほとんど一発OK。

しかも現場の空気まで引っ張って、周りまで勝手に胸が苦しくなってくる。

スタイリストが棒つきキャンディを噛みながら言った。

「...

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