第75章

阿部蓮は、このタイミングで彼女がまだそんなことを気にしているとは思っていなかった。

彼の眼差しが、すっと冷える。しばらくして、長い脚を伸ばして立ち上がると、テーブルを回り込み、高橋詩織の目の前まで来た。見下ろす瞳には温度がない。闇夜の狼みたいに鋭く、逃げ場を許さない。

声は低く、押し殺した怒りが滲む。言葉を一つずつ、噛み砕くように吐き出した。

「お前に、公平を求める資格があるのか?」

高橋詩織は、びくりとして後ずさり、そのままよろけて体勢を崩した。呆然と阿部蓮を見上げる。

「お兄ちゃん……」

「……失望した」

その一言で、高橋詩織の目元がみるみる赤くなる。阿部蓮は容赦なく続けた...

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