第90章

阿部誠は最後にうなずいた。

「いい」

話を終えて二人で階下へ降りると、佐藤美咲が佐藤恵子の後ろにくっついていた。まだトレーニングウェアのまま、ちょっかいを出しては笑わせている。

父子は急いで降りず、階段の途中で立ち止まってその様子を眺めた。佐藤恵子はとうとう吹き出し、怒ったふりをして佐藤美咲の肩をぺしっと叩く。

佐藤美咲はにこにこしながら佐藤恵子の周りをくるくる回り、視線はずっと母親に釘づけだ。母娘の笑い声がリビングに響く。温かくて、そしてこの家ではひどく珍しい光景だった。

佐藤恵子の笑顔を見た瞬間、阿部誠の胸に残っていた名残惜しさは、すっと消えた。

阿部誠は阿部蓮に言う。

「...

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