第35章 彼女のレストランに食べに来た

陸奥守正は、テーブルの上に置かれたキャッシュカードを見つめ、ふっと笑った。

カードを手に取り、指先でくるりと二回転させる。そうして何事もなかったように、元の場所へ静かに押し戻した。

「お二人とも……この件は、お引き受けできません」

浅野建一の顔から血の気が引き、みるみる険しくなる。

「陸奥院長、どういう意味だ!」

「ご老体はすでに意識がはっきりしておられます。判断力も十分です」

陸奥守正は真正面から視線を合わせ、低くも揺るがない声で続けた。

「林桐生さんに会いたいと望まれたのは、ご本人です。病院側に、患者さんの自由意思へ介入する権限はありません。ですから、このカードはお持ち帰り...

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