第185章 愛してる、未菜

松田未菜は受話器に向かって甘えた声を上げた。

「ええ、宏樹。信じてくれてありがとう」

 彼女はわざとらしく私に視線を送ると、眉を軽く上げてみせた。

「宏樹、本当に優しいのね。大好きよ」

 私の目の前で、彼女は山本宏樹と愛の言葉を交わしている。

「私のこと、愛してる?」

「当たり前だよ、未菜」

 山本宏樹の言葉を聞いても、私の心は凪のように静まり返っていた。つい数日前、彼は私に「愛している、お前なしでは生きられない」と縋り付いてきたばかりだ。それなのに今、顔色一つ変えず、息をするように別の女へ愛を囁いている。

 一体どちらが本心なのか。

 おそらく、彼の中ではどちらも真実なの...

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