第204章 非情な心

かつての山本宏樹は、こういう不正を誰よりも憎んでいた。

大学時代の彼は、本当に真っ直ぐな男だった。不公平なことを見れば、いつだって真っ先に声を上げたものだ。

覚えている。ある時、街でひったくりを見かけたときのことだ。宏樹は躊躇なく飛び出し、犯人と取っ組み合いになって、最後には見事に盗品を取り返して見せた。

あの頃の彼は正義そのもので、その瞳には確かに光が宿っていた。

だが今、その光は松田未菜という存在によって、徐々に、しかし確実に消え失せようとしている。

未菜が法を犯したというのに、今の宏樹の頭にあるのは、どうやって彼女を警察署から連れ出すか、それだけだ。

彼女の振る舞いがどれほ...

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