第292章 何の薬

特にこんな公の場では。

山本宏樹はひどく体面を気にする男だ。私の言葉が彼のプライドをズタズタに引き裂いたのは間違いない。

だが、もう彼のちっぽけな面子など気遣うつもりは毛頭なかった。私を大切にも、愛しもしない人間のために、どうして私が配慮してやらなければならないのか。

本当に世間体を気にするのなら、松田未菜を堂々と連れ歩いたりしないはずだ。

松田未菜が立ち上がり、わざとらしく山本宏樹の腕に縋りついた。

「宏樹、もうやめましょう? きっと木村のお姉さん、虫の居所が悪いだけよ。私たちが大人になってあげなきゃ」

その白々しい芝居がかった態度を見て、私はただ吐き気だけを覚えた。

「松田...

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