第10章

「うーん……」

詩音は視線を泳がせ、悠の目を逸らした。

「私、用事があるから先に帰る!」

ソファからするりと降り、バッグを掴んで逃げるように玄関へ向かった。

「今度、企画書を持ってくる。見れば分かるから!」

悠は眉を寄せ、低く言いつける。

「食後に走るな」

手を振って、詩音は車に乗り込んだ。

悠はテールランプを見送りながら、目を冷たく細めた。

スマホを取り出し、番号をタップする。

「最近の和也の動きを調べろ」

翌日、出社した詩音は、空気が妙なのを感じた。

秘書課を通ると、数人が言いかけて飲み込むような顔をしている。

詩音は何も聞かず、社長室へ直行した。

扉が少し開...

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