第20章

「株式の譲渡ですか?」

電話の向こうで、幸谷尊久の声には隠しきれない驚きが滲んでいた。

「どうしてまた急に。そもそも最初は、お嬢様が……」

短い沈黙のあと、彼は続く言葉を飲み込んだ。

だが、彼が最後まで言わずとも、詩音にはその真意が痛いほど分かっていた。

尊久はかつて父の部下であり、雪見家のために長年尽くしてくれた人物だ。

詩音の意識は、自然と数年前の記憶へと引き戻されていく。

あの頃、和也は子会社を立ち上げ、まったく新しい分野へ進出しようとしていた。しかし、彼の手元に十分な資金はなかった。

エンタメ事業は、企画開発から制作、そしてプロモーションに至るまで、どの工程でも莫大な...

ログインして続きを読む