第30章

詩音は心の中で鼻で笑った。

藤原家がなんだというのか。誰もが欲しがるような金塊だとでも思っているのだろうか。

『藤原の奥さま』というちっぽけな座になんて、詩音はこれっぽっちも未練はない。

いったいどの口が、あんな台詞を吐けるのか。百合子の厚顔無恥ぶりには呆れるばかりだ。

着信音が途切れそうになるなか、詩音が動く気配を見せないのを確認し、百合子は密かに胸を撫で下ろした。

今のうちに詩音をなだめておき、後で和也に甘い言葉でも囁かせれば、また息子の言いなりになるだろう。そうすれば、雪見家と藤原家の提携はさらに盤石になる――百合子は腹の底でそう計算していた。

百合子は揉み手をして、顔いっ...

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