第32章

翌日。

詩音はいつも通りに出社し、社内の空気がどこか異様であることに気づいた。

その場に立ち止まり、無表情のまま少し先へ視線をやる。そこでは琴音を中心に人だかりができ、彼女が身振り手振りを交えて得意げに噂話を披露していた。詩音の瞳の奥に、微かな苛立ちが走る。

ほどなくして、誰かが詩音の存在に気づいた。

一瞬にして、群がっていた社員たちが蜘蛛の子を散らすように弾け、そそくさと自席へ戻っていく。

廊下にはあっという間に琴音だけが取り残され、その顔には話し足りないという不満が張り付いていた。

詩音は相手にする気も起きず、淡々と視線を外し、踵を返して社長室へと向かった。

席に着くや否や...

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