第54章

「何を笑ってるんだ」

隣から、低く訝しげな声が不意に降ってきた。

詩音は指の動きを止め、無意識にスマホを伏せて膝に置いた。

顔を上げると、悠の目とぶつかった。レンズ越しの眼差しには僅かな疑念と好奇心が混じり、答えを待つように彼女をじっと見据えている。

「別に、何でもないわ」と、彼女は乾いた笑いを漏らした。

悠は何も言わない。

静かに詩音を見つめるレンズの奥で、瞳が微かに揺れる。その底にある疑念は晴れるどころか、さらに深まっていた。

やがて、悠は彼女へ身を寄せ、声を潜めた。

「俺にはお見通しだぞ」

詩音の顔に浮かんでいた笑みが、一瞬だけ引きつる。

悠は口角を上げた。すべてを...

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