第55章

蓮は突然手を振り上げ、詩音と炎が繋いでいる手を力任せに叩いた。

まったく無防備だった詩音は、たまらず手を離した。手首に走った鋭い痛みに、思わず二、三歩後ずさる。

「お前のことなんか、大嫌いだ!」

蓮は顔を向けて炎を睨みつけると、思い切りその体を突き飛ばした。

「あっちへ行け!」

全身の力を込めたような一撃だった。炎はよろめきながら後退し、地面に激しく倒れ込む。ざらついたアスファルトに手のひらを擦りむき、たちまちヒリヒリとした痛みが走った。

「痛い……」

尻餅をついた炎が顔を上げると、その大きな瞳にはみるみるうちに涙が滲んでいく。

すべてが一瞬の出来事で、誰も反応できなかった。...

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