第12章

夏菜が重苦しい沈黙を破った。彼女は深の袖から手を離し、半歩前に出る。その顔には、吐き気を催すような、見え透いた笑みが張り付いていた。

「さっき深が言ってたの。お姉ちゃん、最近私のプロジェクトのために頑張ってくれてるから、お礼をしたいって。まさか、ここで西園寺さんとデートしてるなんて思わなかったけど」

実に巧妙な言い回しだ。意織が一ノ瀬家のリソースを使いながら、外で他の男と密会していると、暗に非難しているのだ。

意織はグラスを置き、彼女にまともな視線すら向けず、ただ深に向かって片眉を上げた。

「一ノ瀬社長。ここは静かで、込み入った話をするにはうってつけの場所よ。せっかく来たんだから、突...

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