第16章

小野寺建二と白川芳子の登場が、とどめの一撃になるはずだった。常に温順で大局を重んじる意織のことだ、大人しく階下へ降りてきて、自分の車に乗り込むだろうと深は踏んでいた。

だが、その目論見は外れた。

意織は拒絶のジェスチャーを見せた。

その動作は、空間を隔てて深の胸元に重く叩きつけられた。

決然と背を向けて部屋へ戻る意織の姿を見つめていると、やがてバルコニーの明かりがふっと消えた。

深は胸の奥に息苦しさを覚えた。

ひどく見知らぬ感覚だった。

白川家が危機に瀕しさえすれば、意織は折れるはずだと高を括っていた。

何しろこの三年間、彼女はこの結婚を維持するため、そして白川家の体面を保つ...

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