第37章 ピアノ十級

佐藤絵里の口元に狂気を帯びた笑みが浮かんだ。

妖艶な表情が彼女の顔に広がり、黒い瞳は極限まで冷たく澄み切っていた。

その純情と妖艶さが混ざり合い、致命的な美しさを放っていた。

南山六也は思わず見とれてしまった。

佐藤絵里は物憂げな口調で言った。

「高橋社長との提携話を持ってきたのはあなたでしょう?交渉するよう求めたのもあなたじゃない?」

「みんな大人なんだから、自分の決断に責任を持ってもらえます?」

「どんな投資にもリスクはつきもの。それを背負えないなら、会社など経営せず、さっさと閉めたらどう?」

佐藤愛は歯を食いしばり、不満げに南山六也の腕をゆさぶった。

「六也お兄ちゃん...

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