第53章 彼女を庇って前に出る

浅黒い肌の大男は手を伸ばすと、絵里の肩を乱暴に掴み、強引に引き寄せた。

その瞬間、絵里の絶世の美貌が氷のように冷え切り、小さな顔に殺気が満ちる。

彼女は素早く脚を振り上げた。誰もが予想だにしなかった速度で、その華奢な足が男の最も脆弱な一点へと突き刺さった。

「ぐっ……がああああああああっ!」

男の絶叫が夜の空気を切り裂く。

彼はその場に崩れ落ち、うずくまって体を丸めた。みるみるうちに全身から脂汗が噴き出し、顔から血の気が引いていく。

誰もが、その光景に唖然としていた。一見、か弱く見える佐藤絵里に、これほどの破壊力があろうとは。

最も早く我に返った陽太が、絵里の手を引いて自分の背...

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