第54章 浮気相手

週明けのオフィスは、なんとも居心地の悪い、奇妙な空気に満ちていた。

週末までは寄ってたかって罵詈雑言を浴びせようと躍起になっていた連中が、舌の根も乾かぬうちに、まるで何もなかったかのように媚びへつらっているのだ。

佐藤絵里のデスクの上には、さながら小さな売店でも開けそうなほど、色とりどりの菓子箱や袋が積み上げられていた。

誰もが、彼女が気を利かせてそれに手をつけ、過去の無礼を水に流してくれることを期待していた。

しかし、退社時間になっても、絵里はその山に指一本触れなかった。

周囲の人間は落胆の色を隠せない。なんて度量が狭い女なのだろうと、内心で毒づいた。同じ職場で毎日顔を合わせると...

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