第60章 本当に礼儀がない

絵里の、まるで小鳥が甘えるかのようなその仕草に、藤原青樹の心は激しく揺さぶられた。気だるげに肩へと寄り添う姿は、まるで猫のようだ。その魅惑的な瞳と視線が絡んだ瞬間、青樹の瞳は急に深みを増した。

彼の喉仏が、ごくりと上下する。

「ああ」

明確な肯定を得た絵里は、挑発するように黒田真菜を見つめ、唇の端をわずかに吊り上げた。

真菜は怒りと屈辱に顔を歪ませると、ヒールで床をかん、と苛立たしげに鳴らし、何かを言い訳にその場から逃げ去った。

藤原陽太は驚嘆の表情で絵里に親指を立て、心から感心したように言った。

「すげえな、あの黒田真菜が負けるところ、初めて見たぜ!」

絵里はすっと青樹の手を...

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