第106章 彼の体には腐敗した匂い

上山賢が、身なりの良い一人の女性と共に立っていた。

黒髪はきっちりと撫でつけられ、その顔立ちは端正で優雅であり、四十歳だとは到底思えない。

突如飛び掛かってきた茶トラ猫に、彼は思わず手を伸ばして防いだ。

数回爪で引っ掻かれた後、彼はなんとかその首を押さえつけることに成功した。

「ニャッ!」

茶トラ猫は必死にもがき、全身の毛を逆立て、強い攻撃性を見せている。

上山賢が「小賢しい畜生め」と呟くと、ロビーは完全に静まり返った。この場にいる者で、彼、上山賢が特殊管理部門の部長であることを知らない者などいるだろうか。

過去を知り未来を見通す能力を持つ彼には、国のトップでさえ一目置かざるを...

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