第13章 御影伽耶が顔を殴られる

瀬央千弥の瞳が一瞬、翳りを帯びた。その直後、瀬央舞香はころりと態度を変え、彼の腕に抱きついて甘え始めた。

「お兄様、私、これが欲しい! 伽耶ちゃんにすごく似合うと思うの。お兄様は伽耶ちゃんのことが好きでしょ? ちょうど今夜は森家のパーティーだし、伽耶ちゃんにこれを着て一緒に行ってもらえば、お兄様の株も上がるじゃない!」

最後の言葉は、挑発の色が濃かった。

御影星奈は兄に夢中で、死ぬほど愛しているのではなかったか?

今こそ見せつけてやる。あんたが最初から最後まで、ただの笑いものだったってことを!

しかし、御影星奈の表情に波は立たない。瀬央千弥が誰を好きであろうと、彼女には何...

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