第174章 あなたの結婚招待状を待っている

一台の控えめなマイバッハが、道観の入り口の真ん中に停まっていた。

瀬央千弥は運転席に座っていた。目の下には濃い隈ができており、物音を聞きつけるとすぐに車を降りた。

彼と御影星奈の視線が、離れた場所で交錯する。

後者は眉をひそめ、その眼差しには嫌悪感が滲んでいた。

男の喉仏が上下に動く。昨日、祖父が言った言葉を思い出し、その冷徹な顔立ちに苦々しい色が浮かんだ。

漆黒の瞳には、女のほっそりとした後ろ姿が映っている。

御影星奈はそのまま無視するつもりだったが、瀬央千弥はどうしても自分の存在をアピールしたいようだった。

「御影星奈」

男の声は低く響く。

その黒く深い瞳は、まるで人の...

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