第182章 元夫の頭には青々とした草原

謝部綾人の言う妻とは、当然、御影伽耶のことだ。

彼は何気なく言ったのではなく、意図的にそう口にした。

そうすることでしか、御影星奈に今の瀬央千弥は主ある身だと意識させられない。

御影星奈が復縁に応じるとは思っていないが、未然に防ぐに越したことはない。

瀬央千弥に、そこまでの覚悟があるとは限らないのだから。

謝部綾人の長く濃い睫毛の下には、昏い光を宿した双眸があった。

彼は冷ややかに瀬央千弥のスマートフォンの画面をタップする。

ロックはかかっておらず、謝部綾人は難なく連絡先リストから御影伽耶らしき電話番号を見つけ出した。

伽耶ちゃん。

随分と愛情深いことだ。

謝部綾人は電話...

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