第192章 抱き合った

眼前の光景が、瀬央千弥の目を激しく刺した。

彼の角度から見れば、御影星奈は謝部綾人の胸に飛び込んでいるようにしか見えない。

二人の間には、ほとんど距離というものがなかった。

瀬央千弥は細長い切れ長の目で、病室のドアのガラス越しに中を凝視している。

体の脇に置かれた手はすでに拳を握りしめ、額には青筋が浮き出ていた。

その瞳の底からは、凶悪な気が今にも表面に浮かび上がってきそうだ。

謝部綾人の分際で、憑き物が落ちたような顔をしやがって。

あの顔以外に、何か取り柄でもあるというのか?

いずれ謝部家は謝部明人のものになる。謝部綾人には何の関係もないはずだ。

謝部綾人など、自分に到底...

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