第195章 恋の呪い

女性からの気遣いの言葉に、謝部綾人の目には笑みが一層深まった。

彼はゆったりとした口調で言う。

「御影お嬢さんのおかげで、今回の風邪はすぐに治りましたよ」

そう言うと、わざと手首につけている菩提樹の数珠を見せた。

その色は彼の肌の色と相まって、まるで一枚の絵画のように美しい。

御影星奈はそれ以上何も聞かなかった。

病室で起こった気まずい出来事は、都合よく忘れることにした。

食事の途中、御影星奈は化粧室に行きたいと申し出た。

すると今回も、謝部綾人が口を開いた。

「ちょうどいい。私も手を洗いに行こうと思っていたところです」

彼が御影星奈を食事に誘うたび、彼女が化粧室に行くと...

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