第555章 桐谷

富田心恒は、陰鬱な眼差しで羽田佳奈を見据えた。

拳の関節は皮が擦り剥け、鮮血が滲んでいるが、痛みなど感じなかった。

今すぐにでも、羽田佳奈のその口を引き裂いてやりたい衝動に駆られる。

彼の敬愛する「先輩」を、これほどまでに侮辱されて黙っていられるものか。

だが、今はまだその時ではない。

富田心恒は苦痛に耐えるように一度目を閉じ、再び開いた時には、すでに平素の表情に戻っていた。先ほどの暴虐で恐ろしい殺気など、まるで嘘であったかのように。

彼はゆっくりと羽田佳奈の方へ歩み寄る。

羽田佳奈はごくりと唾を飲み込み、神経を張り詰めた。

「な、何をする気?」

「さっきは機嫌が悪かったん...

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