第72章 元夫がまた罪人を庇おうとしている

その言葉に、加賀美は一瞬固まった。

金で雇われた殺し屋?

彼の胸中には既に大胆な推測が浮かんでおり、無意識のうちに口をついて出ていた。

「まさか、殺しのターゲットはお嬢さん自身じゃないだろうな?」

少々不躾な物言いではあったが、それは紛れもない事実だった。

やはり。

電話の向こうから、御影星奈の肯定的な返事が返ってきた。

彼女はさらに手がかりを投げる。

「田中卓志にはもう聞きました。彼にお金を渡した人物は瀬央と名乗る女性だそうです」

K市で瀬央姓の人間はそう多くない。

刑事としての直感が、瀬央家と関係があるに違いないと加賀美に告げていた。

彼の表情が一気に険しくなる。

...

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