第18章

その距離で、彼女の身にまとわりつく甘いクチナシの香りが、かすかに鼻先をかすめた。

小林凌輝は目の色をわずかに深め、雪奈を見据えて低く言う。

「俺は今、ここにいる。こうしてお前を見てる……それで満足か?」

雪奈は一瞬、きょとんとした。まさか彼がそんなふうに受け取るとは思っていなかったのだろう。

可笑しくて、つい目尻が緩む。――けれど、彼の底の見えない視線とぶつかった途端、胸の奥にふっと火が灯った。興味、という名の。

唇の端をつり上げ、媚びと無関心が同居した、だるい笑みを浮かべる。雪奈はドア枠にもたれたまま、緩んだ男のネクタイを指先でついと持ち上げた。

コーヒー色のネクタイの下、乱れ...

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