第32章

周囲では相変わらず、グラスが触れ合う音と笑い声が途切れない。

だが彼にはひどく騒がしく、息苦しく感じられた。胸の内がざわついて、どうにも落ち着かない。

雪奈は小林家の運転手に送らせず、ホテルの前でタクシーを拾った。

行き先を告げると、シートに身を預け、目を閉じて神経を休める。

さっきの言葉は、小林凌輝に向けたというより――自分自身に言い聞かせたものだ。

余計な期待など抱かないこと。

彼の反応ひとつで、心を揺らがせないこと。

自分の道は、最初から最後まで、ひとりで歩くしかない。

スマホがぶるりと震えた。暗号化メッセージアプリに、吉田辰哉から通知。

[snowさん、さっき内部筋...

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