第53章

短い静寂のあと、客席は雷鳴のような拍手と歓声に包まれた。

誰もが、あれは演出の一部だと思ったのだ。一瞬のアクシデントと、その直後の鮮やかなリカバリー――それこそが『リバース・ラグジュアリー』のテーマと完璧に噛み合い、グランドショー全体でもっとも衝撃的で、もっとも記憶に焼きつくクライマックスを生んだのだと。

バックステージで、白井桃奈はモニターを睨みつけていた。雪奈の冷静で隙のない対応、そして歓声に包まれる客席。怒りで全身がぶるぶると震え、握りしめた刃は肉に食い込みそうだった。

――また、失敗。

雪奈を笑いものにするどころか、あいつは大勢の前で、もう一度「主役」をさらっていった。

白...

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